arrow-scroll external-link facebook facebook 青空木材 mail instagram-circle instagram-text

LOADING

BLOG青空ブログ

2017.05.01#ニュース

井手篭コラム 第2弾『山と御先祖』

先日 鹿児島建設新聞 の木陰(こかげ)コラム記事に
加工部 井手篭 が書いた内容の 第2弾 が掲載されました
『山と御先祖』

両親が共働きだったため、私はたびたび祖母の家に預けられた。そんな祖母も85歳。
腰も曲がり、食も細くなったが、今でも田舎で一人暮らしをしている。

田舎への道は山をいくつも越えて行く。その道中、仕事柄の職業病なのだろうか、山に生えている木々につい目が行ってしまう。手入れされた山もあれば、そうでない荒れた山。足を滑らせたら危ないであろう急な斜面に植林されている山など。

最近、祖母が「杉山の木を切った」と聞いた。山師の親戚の勧めもあってお金にしたらしい。祖父たちが私と従兄弟が産まれた記念に植林したもので、これまで使ったお金を考えればトントン。祖母は仏壇に向かい御先祖へ報告していた。

今どき、山を引き継いでいくにも相続税、固定資産税などがかかる。木を切るにも採算が合わない。木材の流通価格をみても、山を継ぐことが喜ばれないこともうなずける。

ついつい、アメリカ大統領のトランプ氏が日本の首相だったら…と想像してしまう。彼は自国の利益を守るために〝アメリカファースト〟を掲げ、批判も多い中で剛腕を振るっている。もし日本の首相だったら、彼はきっと「国土の約3分の2を占める森林は、わが国の貴重な資源」「国産材を第一に、外材に関してはきつく課税する」と言ってくれるのでは…と期待してしまう。

わが国の年間伐採量は0.53%で、自国の木材を有効に活用できていない。森林は伐採しても、植林して適切に管理すれば次世代へと引き継ぐことができる持続可能な資源である。木材自給率も増加を続けているが、それでも約3分の1。次世代へどう引き継いでいくか。終わりのない課題である。

今度、祖母の切った山に息子の誕生を記念して植林を考えている。もちろん息子か孫の世代で切られるかもしれない。御先祖が残した山を、彼らがどう感じるかは未知の話である。

木材を加工し、魅力を伝えることが今の私にできること。
まずは一日一日を大切に、今と向き合っていきたい。